その484 Monkeys and Apes
That's why I said to you!
だーから言っただろ!?
Everybody knows!
誰でも知ってるんだよ!
You know that, huh? おまえ、わかってのんか!?
というわけで、はじまりました。
ええ、そして始まってはや二週間、the Year of Monkey、申年。
プレモのサルたちはわずかでしたが、ここでは、Schleich、Collecta、Papo、SafariそしてMiniature Planetと各国のメーカーから、モンキーズ・アンド・エイプスのなかまたちをご紹介\(^o^)/
同時上映中の、メイン演目、『Space Journey to the West』ともども、よろしくお願いします。
えー、ご存じの方はご存じのように、ひとことでサルと言いましても、いろんなサルがいます。
こちらはこの顔色で有名な、マンドリル。
Schleich 14715 マンドリル
一般にヒヒ、と呼ばれるサルです。ヒヒは漢字で書くと狒狒または狒々。これ、もともとはチウゴクの伝説に登場する妖怪の名前です。ヒヒヒと笑うとか。確かに、ヒヒは笑うような顔をして牙をむき出します。これ、威嚇のポーズだと聞きました。なんでも、ヒトの笑いというのは、キョウフに直面した際のサルの行動が起源になっているそうです。確かに、笑いの本質って、日常生活の中でみちゃいけない、聞いちゃいけない、そのままにしちゃいけないことを取り上げることでもあります。笑ってゴマカす、というのは実は本質的だということか。
さて、話変わってこちらは、有名なニホンザル。(ヒトを除くと)北限のサルとして知られる種です。
69331 MINIATURE PLANET ニホンザル
本来サルは熱帯に棲む獣。ゆえに、北米やヨーロッパにはほとんどサルがいません。かろうじてイベリア半島のような温かいところにいるくらい。ニンゲンの文明が超高度に発達している地域でサルが暮らしているのは、この極東の島々くらいです。
続いてのサルは、ワオキツネザル。旧いタイプのサルですね。輪っかのある尾が有名。ゆえに、輪尾狐猿。
2922239 Safari ワオキツネザル
マダガスカル島に棲んでいます。あれ?それはインドリだったっけ?…調べてみると…あ、よかった。マダガスカル島南部の固有種だそうです。
こちらのながーい尾をしたお方は、ダイアナモンキー。
88673 Collecta ダイアナモンキー
尾だけではなく白いひげや前髪がなかなかりりしい。ダイアナ…とは言ってももちろんオスもいます^_^;
Collectaらしい精密な造形。
以上、いわゆる類人猿ではないタイプのサルたち、つまり、Monkeyです。
かつて彼らサルたちは、より原始的な「原猿類」と、サルらしいサルの「真猿類」という風に分類されていました。アイアイとかガラゴとかメガネザルとかキツネザルとかが原猿類で、それ以外が真猿類。しかしその後研究が進み、分子生物学のせいかなんかも取り入れて再分類してみると、メガネザルはいわゆる真猿類に近いとか、かつての認識の誤りもわかってきました。そのため現在では、「原猿類」「真猿類」という呼び方はされません。
替わってサルの分類の中核となったのは、「曲鼻亜目」と「直鼻亜目」。アイアイやキツネザル、それにガラゴとロリスらが、「曲鼻亜目」に所属し、残りはみーんな「直鼻亜目」。ややこしいですが、Monkeyには曲鼻亜目もいれば直鼻亜目もいるってことですね。
さてそれでは問題です。ここにいる4頭のうち、曲鼻亜目は?
答えはワオキツネザルですね。キツネザル科、すなわちキツネザル下目であり曲鼻亜目です。ちなみに同じマダガスカル島のインドリは、インドリ科という独立の科ですが極めて近縁ですね。インドリのほかにはシファカやアバヒと呼ばれる属があり、このインドリ科は最も大型の曲鼻亜目ということになります。
同じく尻尾の長いダイアナモンキーですが、こちらはオナガザル科に属す、直鼻亜目の一種。なんと、Wikipedia日本語版では、このダイアナモンキーがオナガザル科のページのトップ写真を飾っています!
オナガザル科は、アフリカ大陸とアジアに棲んでいることから、旧世界ザルという名で呼ばれることもあります。英語版のWikipediaではこのとおり、Old World Monkeyという項目名で紹介されていますね。
オナガザル科のオナガザル亜科は、おそらく、もっともサルらしいサルのグループと言っていいでしょう。その中には、オナガザル族、ヒヒ族がありまして、ヒヒ族には、マカク属とかヒヒ属とかマンドリル属とかが所属しています。写真のうち、ニホンザルはマカク属、マンドリルはマンドリル属です。
え?ニホンザルもヒヒなのかって?そうなんです。実はヒヒ族の中で、マンドリルとマントヒヒとゲラダヒヒはそれぞれ別の属に分類されます。そして、ニホンザルもヒヒ族のひとつマカク属のサル。ということは?そう、マンドリルは、ニホンザルをヒヒと呼んでいい程度にはヒヒであり、ニホンザルをヒヒと呼ばない程度にはヒヒでない、ということになります。ややこしいですね。ヒヒヒ(^_^)
そして、この系統図をみていただくとわかりますが、オナガザル科はいわゆる類人猿、すなわち、ヒト上科に最も近いサルなんですねー。
そして彼らがヒト上科。
つまり、英語ではApeと呼ばれるサルたち。
われわれヒト、すなわちホモ・サピエンスを含むグループで、しばしば類人猿なんて呼ばれます。
だから言ったじゃないかー!おまえはいっつも!キイーー!
テンションが高い印象のチンパンジーは、現存する中ではボノボと共にもっとヒトに近い存在です。
Schleich 廃番 チンパンジー(仔)
…おやおや、またうちのワルガキはひとさまの仔にランボウなことを言っているようだ…やれやれ…
こちらはちょっとサイズが大きめですが^_^;
50106 Papo チンパンジー B
塗装は荒いのですがかなりのリアリティと存在感。実際、動物園などでチンパンジーをみると、そのゴッツい体型と風格に驚くことがありますね。
ありゃりゃ?うちの仔、何か粗相をしたかな??ありゃりゃ?
こちらは森の人として知られる、物静かな印象のあるオランウータン。顔の様子ですぐに生体の雄だとわかりますね。このヒダ、フランジと呼びますが、群れの中でどんな立場にあるかによって様子が変わる、つまり強い立場になると発達するそうです。うーむ、すごい。
50120 Papo オランウータン
これは最近のPapoらしく素晴らしく良くできた造型。ポージングもドンピシャです!
お、おい、、や、やめなよ、、
なにー!キー!!
お、おう、、
朴訥な印象の伴うのはゴリラ。
Schleich 14663 ゴリラ(仔)
ボウズよ、ほおっておけ。他人は他人。わしらは静かに暮らそう。
同じくこちらのシルバーバックな個体は、
Schleich 14661 ゴリラ(オス)
ナックルウォークの姿勢がりりしい!
ウキャーウキャー!
ウキャーウキャー!
こちらは、ヒト上科の中でも小型のなかま、テナガザルより。
Schleich 14718 テナガザル(仔)
チンパンくん、かっけー!
マルっ!
ウキキー!ウキキー!
これっ、おまえっ、やんちゃボウズを見倣っちゃあダメですっ!
50146 Papo ギボン
ギボンとは?そう、テナガザルを英語ではギボン(gibbon)と呼ぶのです。
だからなー、そんでなー、そういうわけでなー う、うん、そうなのかな、そうなんだね そうだー そうだー |
おいら、のんびりやさんだからさ…
いやーシッパイシッパイ
おうよっ、まっ、わかりゃいいのよ、わかりゃあな
なかなおりー!マルっ! |
ホっ。なんだかおちついたみたいだ。よかった。あらそいごとは好きじゃないんだ。。
いやー、まいったよ、おやじ。オランウータンのチビがさあ、ああで、こうで、だからこうして…。
おまえはいっつもケンカっぱやいねえ。
ケンカじゃないやいっ!おれが世の中の道理ってもんをだなあ、教えてやってるんだいっ!
はて、わしらなんで、ここに来たんだったかのぉ?ボウズ、おぼえてるか?
さー。なんでだろ、父さん。
ふむ。わしらどっちもボーっとしてるなあ。ま、ボルネオに帰ればそんなでもないんだけどな。
うん。
ふう。やかましいのは好かんなあ。
そうだね、お父さん。
チンパン君やオラン君も、おとこは黙って背中で語り合えばいいのにね。
うむ。それが真の強さだな。
ウホッス!! |
うきゃ?
さて。
擬人化はさておき^_^;
ヒト上科、すなわち、Apeたちは、2,800万年前から2,400万年前くらいに、ほかのサルたちから分岐したグループと言われています。
ではヒト上科の中はどんな感じで分類できるかといいますと、まず大きな分け方として、テナガザル科とヒト科、この二つに分かれます。
つまり、テナガザルたちは最も古く/早くに、このグループから分岐したという訳。その姿がサルらしいサルに似ているのもわかりますね。でも、他のヒト上科のサルたちと同じく、尾はありません。
続いて、ヒト科ですが、大きく、オランウータン亜科とヒト亜科とにわかれます。はい、二番目に分岐したのがオランウータンだというわけですね。1,300万年前のことです。オランウータン亜科にはほかにも種がありましたが、現在までにすべて滅び、このオランウータン一種(亜種はあります)のみとなっています。まさに崖っぷちに立たされている系統。
ちなみに、ヒト、チンパンジー、ゴリラはそれぞれアフリカで発生した種ですが、オランウータンはアジア熱帯域にのみ棲息しています。おそらくその分岐と進化もこの地域で成されたことでしょう。絶滅種の化石も東南アジアやチウゴクからのみ出土しています。対して、アフリカに残った系統が残る三種を含む、ヒト亜科となりました。
ヒト亜科は、ギガントピテクス族、ゴリラ族、そしてヒト族にわけられます。ギガントピテクス族は、イェティの正体だ!なんていう説があった時期もありましたが、一般的にはすでに絶滅していると考えられているグループです。その名のとおり3m、500kgを超える巨大な体躯を誇る、史上最大のヒト上科の動物で、チウゴク、インド、ベトナムなどから化石が出土しています。なるほど。そのため、雪男や野人の正体だ!っていう人が出てくるんですね。
ゴリラ族にはヒガシローランドゴリラ、ニシローランドゴリラ、マウンテンゴリラと通称されるグループがありますが、これらがそれぞれ種なのか、亜種なのか、個体群に過ぎないのはは説がわかれるところだそうです。最近では、ニシゴリラ、ヒガシゴリラというわけ方も有力だとか。656万年前±26万年前に、ゴリラ族はヒト族と分岐しています。
最後に残ったのが、ヒト族。チンパンジー亜族とヒト亜族とがあり、487万年±23万年前に、両者は分岐しました。お、ゴリラが分岐した後、そんなに時間が経ってないんですね。
そして、ヒト亜族。
チンパンジー亜族はチンパンジーとボノボの2種を含み、チンパンジーは4ないし5の亜種からなると言われています。つまり、ヒト族は現在、チンパンジー、ボノボ、ヒトのわずか3種しか生き残っていません。しかしかつては数々の種が誕生し、そして絶滅していきました。
ヒト亜族の分類については、人類学、考古学、分子生物学など各分野で新たな発見がいまも続いており、いつまた新しい説が登場するかはわかりませんが、関心ある方はたとえばここを追いかけておけば、随時アップデートされるのではないでしょうか。
ヒト亜族に属する属として有名なのは、華奢なアウストラロピテクス属、頑丈なパラントロプス属、そしてわれわれを含むヒト属。シェラントロプス属とかオロリン属が最古の人類とされることもありますがこれらはむしろヒト亜族とチンパンジー亜族の共通の祖先と言えそうです。
ヒト属以外の属はしばしば「猿人」と呼ばれています。対してヒト属にいわゆる「原人」「旧人」「新人」があります。注意しなければいけないのは、発見されている原人、旧人、新人はそれぞれ祖先-子孫の関係になっているわけではないということ。北京原人やジャワ原人が進化したり、ネアンデルタール人が進化したりして、われわれの祖先になったわけではありません。それどころか、それらはそれぞれ別の種として共存していました。
つまり、原人と呼ばれる種がアフリカで誕生し、中東やアジアに拡がって行ったあとしばらくして、同じアフリカでこんどはいわゆる旧人と呼ばれる種が誕生し、再びアジア、中東、そしてヨーロッパにも拡散していきました。最後に、われわれの祖先であるホモ・サピエンスがまたまたアフリカで誕生し、同じくアフリカを出て、恐らくはアラビア半島の南岸やエジプト、レバントあたりを通って、インド亜大陸、スンダランド、オーストラリア、アジア、ヨーロッパ、シベリア、そして南北アメリカ大陸へと拡大していきました。
われわれの祖先がアフリカ大陸で誕生したのは20万年ないし30万年ほど前、アフリカを出たのは7万年前とも5万年前とも言われています。まだわれわれの祖先がアフリカにいた頃、アジアにはやホモ・エレクトスのさまざまな亜種(ジャワ原人や北京原人)、それにホモ・フローレシエンシスなどの原人段階の種が何種も生きていました。そして中東やヨーロッパには、ホモ・ネアンデルターレンシスという旧人段階の種が繁栄していました。シベリアやアジアで発見されたいわゆる「デニソワ人」は原人とする説と旧人とする説があるようですが、ネアンデルターレンシスに近い種だったと考えられています。
そう、この頃地球には、最低でも4種ないし5種のヒト属の種が存在していたのです\(^o^)/
やがて、新人タイプの種や旧人タイプの種は、気候の変化や新たなタイプの種との生存競争に敗れたか、姿を消していきました。しかし、ホモ・ネアンデルターレンシスはホモ・サピエンスがアフリカを出てアジアやヨーロッパに拡散した時もまだそこに暮らしており、まさにわれわれの隣人でした。ホモ・フローレシエンシスはわずか1万数千年前まで、孤島で生き残っていました。彼らはどこへいったのか?
少なくとも言えることは、ホモ・ネアンデルターレンシスやデニソワ人は完全には滅びていないということ。アフリカを出たホモ・サピエンス、すなわちアジア人とヨーロッパ人のDNA解析を行うと、1%~4%ほど、ホモ・ネアンデルターレンシスに起因する遺伝子コードが発見されたそうです。そしてデニソワ人も、アジアや太平洋のホモ・サピエンスの中にまた。
それでも現在、ヒト属は、いやヒト亜族は、わずかにわれわれだけとなってしまいました。チンパンジー亜族を入れても3種。いや、さらに系統樹をさかのぼってゴリラ族を含めたヒト亜科、オランウータン亜科を含めたヒト科、としてみたときにも、その種は両手ないし片手で数えられるほどしか残っていません。ヒト科はどんどん多様性を喪っているのかも。。
ヒトの多様性も大事ですが、たまには、近しい存在であるチンパンジーやゴリラ、オランウータンの身にも眼を向け、われわれが地球でたったひとつのヒト科のケモノだなんてことにならないよう、気を配っていきたいものですね(^_^)