2015年9月26日土曜日

その472 Audio Talk vol.02 

ハイハイ!ハイレゾの話が出たね!ここからは僕が引き取るヨー。

…だ、誰?


僕はP&M Construction AGに勤める建設作業員。そして、趣味はオーディオ!…といっても、決して高くはないお給料では、医者だの弁護士だの経営者だのの人たちがやるような高級アンプに高級スピーカー!なんて世界はとてもムリ(T_T) ってことで、調べるだけ調べて耳年増な、なんちゃってオーディオマニアな、ケヴィンだよ。

…そ、それって…

でも実際、ヘッドホンって、部屋が大きくもなく、防音でもなく、音楽聴けるのは夜、っていうフツウに働いてるフツウな僕らには、アンプとスピーカーを兼ねた、超重要音響機器だ!って思うんだよね。だから、選ぶならしっかりと!そして、あんまり高いものを買うよりは、手ごろな1万円代あたりでいろいろ試してほしいなっ。もちろん、ハイレゾの世界でもっ!

…ミ、ミーハー…






まあまあ。

で。ハイレゾ、つまりハイレゾリューションオーディオとは、いま東の果て、ニッポンで、オーディオメーカー各社が社運を賭けたり、市場拡大を狙ったり、復活を狙ったり、いろんな思惑でがんばっている、新たな音響機器のマーケティング上の用語です。


マーケティングと言っても、基本的には技術的な定義に基づいてます。

アナログの音をデジタル化して録音するときの、サンプリング周波数量子化ビット数のいずれかが、CD-DA、つまりいわゆる音楽CDの規格を上回るものを一般的にハイレゾって呼んでますが、かの国では、JEITAとかJASっていう団体が、規格の定義を決めてます。CD-DAは、サンプリング周波数が44.1KHz、量子化ビットが16bit。このどちらかを超えるとハイレゾ、ってことで、たとえばいま市場では、192KHz/24bit対応!なんてことが謳われてます。

つまり、いわゆる"1bit オーディオ"と呼ばれるDSD、すなわちDirect Stream Digitalの場合の44.1KHz×64=2.8224MHzのサンプリング周波数とか、オープンソースの可逆圧縮音声コーデックであるFLAC、すなわちFree Lossless Audio Codecとか、君たちも好きな…

…iTunesで知られるApple Losslessとか、いやそもそも、もっと昔から使われてたリニアPCMのWav音源でもサンプリング周波数と量子化ビット数が44.1KHzか16bitを超えてればキホン、ハイレゾって呼ばれるよ。




ギュインギュインギュイン!

ちょっとまちなさい、このオタクちゃん。もうちょっとわかりやすく説明してっ!

そうだそうだー

わかんないぞー

サンプリング周波数とか量子化ビットってそもそもなんだー


えー、サンプリング周波数とはですね、単位時間あたりに行われるサンプリングの頻度です。単位はおなじみの、Hz

周波数って、たとえば、音の高低とか、交流電流の規格とか、携帯やWi-Fiの電波とか、電子レンジとか、コンピューターのCPUの性能とか、いろんなところでみかけると思うけど、要は、波的な何かにおいて、一定の時間のあいだに何回波があるかってことです。つまり、周波数が高ければ波が細かく密にあって、低ければなだらかな波がちょっとだけある。いわゆる直流電流ってのはこの波がなくってまっすぐってこと。

アナログの波形をデジタルにサンプリングするときには、波形の持つ周波数の倍のサンプリング周波数が必要です。例えば、CD-DAの44.1KHzってのは、22.05KHzまでの高音をサンプリングできて、DATの48KHzだと24KHz。ニンゲンの可聴域はだいたい上が22KHzって言われているから、このサンプリング周波数でじゅうぶんだろってことで音楽CDの規格ができました。昔よく、アナログレコードに比べてCDは音がワルイんだい!っていう主張を聞いたと思いますが、これは以前、CD録音の際に、20KHz以上の音はフィルターでカットされていたからなんだって。でもいまは22.05KHzまでカットしないのが主流になってきてるから実は差はほとんどありません。で、量子化ビット数とは、えっと、えっと…


ケヴィン、量子化ビット数は僕が説明しようか?

あ!僕のオーディオ友達、レーシングカーエンジニアのニコラじゃないか!うん、頼むよ。


サンプリング周波数がサンプリングの頻度だったとすると、量子化ビットは、そのサンプリングにおいてどれだけの情報量を録るのかってことです。

量子力学の時代になってから、物理量は連続した値ではなくてとびとびの値として観測されるようになりました。ここでもそれと同じで、時系列に沿ってアナログデータをとびとびの値でサンプリングするから、"量子化"、そしてそれを表すのに使うビット数を、"量子化ビット数"って呼んでます。16bitってことは、2の16乗、24bitってことは2の24乗の値を使って、データを記録できるってことです。詳しくは、離散信号DA変換、それに量子化誤差などについて調べてね。

ね、ねえ、ディーノ、わかった?

い、いや、ジャッキー、まったく…。



おいおいおい、おまえら、なんだってハイレゾの説明がそんなにもまどろっこしくなるんだよ!もっと端的に言えないのか~

あ!またまたオーディオ仲間の、鉱山技師のリチャードさん、いや、リッチー!

おれが説明してやるよ、まったく。。

さすが!山師だけあって、レアメタル鉱山の権利をゲットして、ワーカーから一気にフォーブスクラスのビリオネアになったリッチーさんっ!!


バカ。いいんだよ、そういうのは。おれはいまでも現場好きなワーカーだ。

要するに、ハイレゾって言ってんのは、CDを作る時よりも高い周波数の音まで拾えて、かつ、その1つ1つの表現によりリッチなデータ領域を当てはめることで、これまでのCD以上の音質を再現するテクノロジー、ってことだろ?

そう!まさにそう!そう言おうと思ってたんだよ!

…。


この陸さまのCDラジカセよりも音がいいってのかー?


ズンドコズンドコ…

ドンドコドンドコ…



わたしたちミュージシャンの魂の叫びを、きちんとデジタイズして記録して、リスナーのみんなに届けてくれるって訳ね。ライブの臨場感も、演奏の細かなニュアンスも、アタシの魂の鼓動も!!この髪のような、山吹色(サンライズイエロー)のオーバードライブも!!






…うーん。

まあ、数字を聞くとそう思えるんだけどね。

ん?


ウェザリポ、どうしたの?ヘッドホンはあんなに盛り上がってたのに、ハイレゾの話になってからテンションが低いわね?


おろ?どうしたの、ウェザリポ?

あれかな?僕が、このケヴィンが説明を奪っちゃったから、おこってるのかな…。

…いや、ウェザリポに限ってチガウと思うけど…


ウェザリポはあれだな、ハイレゾ懐疑派、ハイレゾ批判派なんじゃないか?


え?どういう意味?



うーん。。いや、批判ってわけじゃないんだけど。。。正直まだ、ハイレゾがホントにいい音で音楽が聴けるのかどうか、おれ自身に自信がないんだ。

というと?



それはこういうことね!

あ!お姉ちゃん!

…誰?
…ていうかそもそもあんたたちみんな誰?^_^;

わたしたちのアマチュアバンドでサウンドエンジニアを務めてくれてる、サウンド&レコーディングマニア、宅録の女王、ミキシィよ。そしてわたしは次女のシンディ。こっちのスケーターは三女のアイスィ。



ケヴィンが説明していたように、ヒトの可聴域はだいたい22KHzくらいまでって言われてる。それも、年齢によって差があって、加齢とともに高音は聴き取りづらくなるわ。新生児は40KHzくらいまで聴き取っているなんて説もある一方で、おじちゃんおばちゃんだと、22KHzなんてたぶんムリね。

それなのに、ハイレゾは、その22KHzよりも上の高音域をサンプリングしたって言ってる。たとえばサンプリング周波数192KHzってことは、96KHzまでの音を録ってるわけ。それってニンゲンにとって意味あるのか?そもそも聴こえない音だろ?結局、メーカーのマーケティング、音楽ソフト会社のマーケティング、新しい音響機器や、既にCDで持ってる音源をもう一回買ってもらおう、これまでよりも高い機器や、高い音楽ファイルを買ってもらおう、ってことなんじゃないか、っていう批判が、あるわけよ。


なるほどー

わかりやすいね。


確かに、狂想曲って感じするものね。機材高いし。


そ、そうなんだ。もちろんおれも、いい音質で聴きたいとか、演奏したものをできるだけ近い音で聴いてほしいって気持ちはあるから、ホントなら大歓迎なんだけど…

いまのところ、高いオカネ出してハイレゾ機器買うよりも、性能のいいモニターヘッドホンを買った方が、いいんじゃないかなーとか。。。


ハイハイハイ!モニターヘッドホンてなんですか?

おいおい、ケヴィン、それはさすがにおさえておこうぜ。おまえ、説明する側だろ?質問する側になってどうするんだ…。

う、うん。。

いいわ、モニターヘッドホンについてはアタシが説明したげる。あれって本来は音楽の制作をする側の機材で、聴く側のものじゃないから、音楽鑑賞マニアっぽいそのケヴィンって人があんまりなじみがないのもわかるもの。

モニターヘッドホンは、スタジオとか、DTMとか、レコーディングの現場で使われるヘッドホンの一種よ。その名のとおり、音楽を楽しむよりもまず、観察することが目的。つまり、制作した音楽が、ちゃんと意図通りに録音されているか、機材の調整不足で思ったような音が出てないなんてことがないか、カクニンするための道具なの。

だから大事なのは、音の正確さ。一般に、解像度っていわれる音の明瞭さとか、あとヘンに低音や高音を強調しないフラットで素直な音質とか。それから業務用で長時間使う訳だから、できるだけ軽くして、耳やアタマに負担が少ないような形状が好まれることもあるよね。

そうそう。ボクも舜安南として楽曲を作ったり、歌を録音したりするときには使ってる。これまたaudio-technicaのプロフェッショナルユースのモニターヘッドホンの、ATH-M70x!…の廉価版、いや、民生品モデルである、、、ATH-M40x!でもこれイチオウ、メーカー的には一般製品じゃなくって音楽制作関連製品のカテゴリーにいれてるモデルなんだ。ドライバーが45mmで作り的にもちょっと堅牢かつ回転部分がぐるんぐるんなM50xとも迷ったんだけど…値段が倍くらい違うんで、M40xでガマンしました。コードはやっぱり左だけど、1.2mのカールコードと3mのストレートコードが両方ついてるので、デスクトップでもスタジオでもベンリです!

音はとてもキレイ!澄んだ感じです。50xほどじゃないけど、そのぶん、通常の音楽鑑賞にも使えますっ。


そのモニターヘッドホンてので聴くと、ハイレゾみたいにいい音で聴こえるの??

いや、ちょっと違うんだけど、最近ってみんな、重低音重視のモデルを持ってることが多いじゃない?それってノリはいいけど、音がヘンに隠れたりもしてるよね。そんな人が、新たにモニターヘッドホンを買って、解像度の高い本来の音、スタジオでミュージシャンやエンジニアが聴いてる音を感じられれば、ハイレゾに求めようとしてるものの多くは得られるんじゃないかなっていうリクツなんだけど。。。


…そうなの?ハイレゾ、いらないの?

うーん、そういう声もあるにはあるが、ちょっとひとつ、忘れていることがあるんじゃないかなあ。

ていうと?


ハイレゾを批判する意見の多くは、可聴域外の高音の無意味さを批判する声がほとんどだ。もちろんそれは、192KHz/24bit!!なんていうマーケティングをやりすぎてるメーカー、レーベル、業界、団体にも責任があると思うんだが…

…でもな、大事なのは可聴域内がどれだけキレイにデジタル化されてるか、ってことなんだよな、ホントは。


そのとおり、鉱山技師のおっさん、わかってるわね。

…おっさんって…おっさんだけど…

サンプリング、デジタイズの理論をよく考えてもらうとわかるけど、サンプリング周波数が高いということは、これまで以上に高い頻度、濃い時間的密度で、アナログの音を拾ってデジタル化しているわけ。てことは、これまで録り漏れてた瞬間、瞬間、音の立ち上がりや細かな機微が、録れてるっていう考えもあるわけ。


そう、ミュージシャンは連続する一瞬一瞬に魂を込めてるのよ!このギターのストラップのような、ターコイズルーのオーバードライブを!!


デジタルの時代だからって、量子化だかなんだか言って、不連続に録られるのはイヤよ!連続的に転がる石、それがRock 'n Rollよ!!


う、うん、その主張もよくわかるよ。でも、だからこそ、可聴域をキレイに聞きたいんなら、コストパフォーマンス的にはモニターヘッドホンじゃないかなーって…。

まだちゃんと判断できないけど。

ハイハイハイ!ウェザリポ君!

誰?ていうか、ウェザリポの知り合いなの?

あ、彼女は人気ロッカーのDragonflyだよ?ジョディ、知らないの?

ええっ!あ、あの!?ウェザリポ、知り合いなの??

うん、たまたま楽器屋さんで遭ってさ…。

でさ、その時にウェザリポ君が買ってた機材ってさ…

…ハイレゾ対応じゃなかった??

…う。。。

ええええーーー!!

…あ、あれだけモンク言っといて…

結局買ってんのかよ、このにいちゃんは…


そ、そうなの?ウェザリポ…。

い、いや、あれはね…。



(続く)