その160
「うーむ。。。なんだか違うのぉ。この色じゃないんじゃなあ。」
「それにこう、羽の感じがまだまだわからん。」
「3076 農婦セット」「型番不明 農具と鳥(add-on)」よりニワトリとヒヨコ。
「うーん。野菜もこう、なんというか。色はいいんじゃが。みずみずしさを表現するにはどうしたらいいか。
シルクスクリーンならではの技法を編み出したいものよのぉ。」
figureボーイズシリーズから「1-5 怪傑ゾロ」「2-11 忍者」「3-11 タトゥーの海賊」「4-4 魔術師」の組み合わせで制作し、かつてはNINJA/暗部役でしたが今回は江戸の絵師。
「ケモノたちもこう、なんというか、いきいきとした姿を表すにはどんな構図がいいかのお。」
「そうか、こやつらはヒトとは違う。あちこち向いておるんじゃ。そしてあちこちに向かっておる。
ヒトの視線はそれを観るとき、ひとつには定まらん。定まりきらん。ゆえにヒトはそこに、おのれではいかようにもしがたい自然の理、ケモノやトリや草木に宿る神や仏を感じるのか。」
「この花もよい。南蛮渡来の禁制品と聞いた。
なにやら種を食すとうまいらしいが…。
うわっ、ペッペッ!
これは胡桃のほうが百倍うまいわい。」
「薩摩の壺。それに阿波の鶏たち。
黄は美しいな。
黄土と石黄を使って…。」
「この鶏たちのクビの動き。
うーん、たまらん。
儂、ニワトリフェチかな。
将来、鶏の絵師とか言われたりして(笑)」
「狐、鼠、穴熊。
下生えの羊歯の葉の緑の艶やかなこと。
ケモノの毛の色は一頭一頭違っておるな。」
「でも基本的に鳥が好きなんじゃな。
これは鳩というやつか。
碧い色、灰色、それに白銀に輝く羽もある。いや、動くたびにその色を変えるな。まるでびろうどのような羽根じゃ。そしてこの雄。時々クビを膨らませておるな。まるで違う鳥じゃ。これは求愛か?」
「儂も妻LOVEじゃ♪」
「あなた。お呼びになりました?」
「おお、これはまた美しい。」
figure ガールズシリーズから「6-5 チャイナガール」「2-4 ヴァンピレス」「2-6 お姫様」などで制作。
「そうでしょう?お隣からいただいたお花です。百合ですかね。」
「いや、百合も美しいが、儂が言うたのはおまえのことじゃ。」
「あら、まあ、そんな♪
何かよい絵が描けまして?」
「う、うむ…。」
「そ、それがな。
ケが抜けるほど
こう頭を悩ませておるのじゃが。
儂の大好きな鶏をな。描きたいんじゃが…。」
「きょうはどうもこう、黄に眼がゆくのじゃが、ホントのところはもっとこう、華やかなというか、力強い鶏が描きたくてな。
ほれ、一瞬こわいくらいの眼つきと迫力のある、まるでトカゲのような眼に、龍のような脚、そして炎と雪と黒雲の交じり合ったような羽の…。」
「ちょうどあのような?」
「そ、そうじゃ!あんな感じじゃ!」
「それに、わたくしのきょうの装いのような?」
「そう!それじゃ!なんとも鮮やかなそれでいて深みのある紅じゃな。それはどうした?」
「なんでも、蝦夷錦というそうですわ。迷ってましたが思い切って買っちゃいました♪
遠く唐国のお姫様方のお召し物だとか。蝦夷からは同じ唐国のお偉い方々のお召し物がときどき届くのですが、これは珍しいオンナモノだそうですわ。
蝦夷の者たちは鉄、米、酒を樺太の山丹の者に商い、そして山丹の者が貂の毛皮を以て唐国に納めて得たこのような錦と取り換えるのだそうです。」
「ほほう。美しいなあ。商売のことはわからんが…。」
「何をまた。あなたも昔は社長でしたのに(笑)」
「もう忘れた忘れた!シゴトのことはすっかり忘れたぞ!」
「それより鶏じゃ!」
「尾長、矮鶏、それに軍鶏。
あなたがお描きになりたそうな鶏をたくさん仕入れておきましたよ。」
「おお、さすがじゃ!ただ美しいだけでなく気も利き利発と来ておる。さすがじゃ!LOVELOVEじゃ!」
「まあ♪」
「さっそく描こう!」
「…。しかしすまんな。どうにも儂はヒトを描くのがニガテでな。おまえをきれいに描いてやることができんで(T_T)」
「いえいえ、わたしはあなたの描かれるケモノや鶏たちが好きですよ。」
「よし、さっそく創作ターイムじゃ!」
「ヒソヒソ。旦那さまはいったいどなたと喋ってらっしゃるのか?見る限り誰もおらぬが、何やら奥方に話をしておられるような口ぶり。しかし旦那さまは独り身。。。ついに旦那さまも。。。あるいはあの山ほどいる鶏に話しかけておいでか。。。それもそれで。。。やれやれ。困ったものだ。これでは枡源ももうおしまいじゃなあ。。。ふぅ。」
(つづく)