2014年6月9日月曜日

その164 

伊藤若冲

または
その弟子たちによる

 『樹花鳥獣図屏風』

「原案はわしじゃ。

ゾウは好きなんじゃよ、ゾウは。




「京にも来たのよ、このデカいのが。

出島和蘭商人が連れてきたのかの。

ほかにも阿弗利加とやらいう地の獣や鳥がたくさん来た。儂はもう興奮してのお。



鶏や小さな虫や魚ももちろん好きじゃが、こういう見たことない鳥獣にはそれはそれは興奮する。」

「ケも抜けるほど興奮したわい。

そして、描いて描いて描きまくった。」



「これは最近できたメリケンという国の鳥獣らしい。」


「ここには北の獣と南の獣を両方描いてみようかのお。」

「ついつい夢中になるのお。」

「ゾウというのは仏典やら唐国の書物やらで読んだことはあったが、あれはいったいなんだ。

ハナか?それに大きな歯が生えておる。牙というてもトラや獅子とは違う。

観れば観るほど不思議じゃ。」


「このサルもまた不思議じゃ。まるでヒトのようじゃ。唐人がこれが猩猩じゃというておったがまことであろうか。たしかに酒を飲んだような赤ら顔じゃ。儂は酒は飲まんからわからんが。。。」




「やれクビの長い鳥がいたな。

駝鳥というたか。鳥のようで駱駝のようで。鶴とも鷺とも朱鷺とも違うな。


いやまて、ヒクイドリだったかな。」


うにかふる というのもおったな。なにやら長い角があった。馬の姿に長いツノっと。

いや待て、しかしこの前みた生きたのは、もっと太っていた気もするが。。。

あれは要するに犀であろう?唐国の絵にも描かれておった、犀よのお。

いいかげんな絵はいかん。儂は観察の漢じゃ。」

「とつくにでは馬もデカいわ。

それにあの鷲はなんじゃ?まるで儂のような鷲じゃ。

ケがさっぱりないときた。」

「よく観て描こう。

なにせ一生に一度、まみえるかどうかという珍しい鳥獣じゃ。」

「この不思議さ、常なる描き方では伝わらん。

まるで夢を見ているかのようなこの感じ。

そうじゃ!ピクセルで描こう!



画面を小さな升目に区切って、その中に色を塗って、遠くから見れば絵になって。。。これなら儂の感じておる不思議さが伝わる。実際に観ているのか観ていないのかわからんようなこの気持ち。」


ヒクイドリとヤマアラシ。というのもおったな。しかしプレモではおらんから仕方ない。SchleichとCollectaのは今回は入れないでおこう。」



「オールプレモじゃ。」

「この迫りくる迫力。」

弟子たちに大きな屏風に仕上げさせよう。さてさて、うまく描いてくれるかどうか。まあ、お手並み拝見じゃな。」

「なーに、わしほど巧く描かずともよい。儂には儂の画風、弟子には弟子の画風。

儂は身近な鳥獣草木をじっくりとあきるほど観察して、そのまま描いた。いや、ホンモノ以上にホンモノらしく描いた。

しかしこの鳥獣は夢の世界のものじゃ。うつつと夢はおのずと異なる。夢には夢の描き方があろう。さてさて、楽しみじゃ。」





樹花鳥獣図屏風 原画
featuring 若冲 アンド
プレモ アニマル オールスターズ