その191
青いベストの魔術師(?)「いやー、ご老人。おひさしぶりっ。」シンドバッド老人「おおお、おぬしこそ元気だったか?その節は何ともうまいものをいただいて、感謝感謝じゃ。」
トリ「この方がザンジバルの?」
シンドバッド老人「うむ。わしにこのすばらしい飲み物をくれたお人じゃ。名は確かメネリクどの。」
メネリク「いかにもいかにも。
遠くイエメンの地より、貿易と学問を極めるためにかの島と行き来しております。
で、ご老人、またあらためて何でしょう。わたしに何かできることがありますか?つまりMay I help you?です。」
シンドバッド老人「もちろんじゃ!この黒い飲みもの、あれからはまってしまっての。いったいどこで手に入るのか、どうやって作るのか、ご存じか?」
メネリク「もち・ろん、存じておりますよ、ご老人。そういえばそれをお伝えしてませんでしたね。これは僕としたことがシッパイシッパイ。」
シンドバッド老人「いやいや、気にせんでいい。それよりそれ、どうなんじゃ?あと、後ろのそれはなんじゃ?」
メネリク「あっちは酒。そしてこっちは、その黒き液体。コーヒーとか珈琲とか言われるものですよ。
アクスム王国やタンガニーカ湖の近く、キリマンジャロの山裾にはたくさん生えているそうです。わたしもそこのヤギ飼いからもらいました。
ついでにヴァニラ、チョコレート、キャラメルのフレーバーをつけてみました。
おひとついかが?」
若者シンドバッド「どれどれ、ではおれがヴァニラを試してみよう。。。
う、うまい!
これはうまい!
メネリク、おれにこの作り方を教えてくれ!おれはこれで一山あてると、大海原に誓ったんだ~」
メネリク「いいですよ。これはこうしてああしてここをこうして…。」
若者シンドバッド「お、おう、なんとなくわかった。で、この最初にいれた豆みたいなものは何だ?」
メネリク「これこそが黒い水の正体。コーヒー豆、つまりコーヒーの実です。これを挽いて粉にして湯に通すことであの黒い水が出来上がります。」
若者シンドバッド「なに~、豆なのか~。」
メネリク「まあ、豆ではありませんが豆みたいですよね。」
若者シンドバッド「よし!メネリク!」
メネリク「はい?」
若者シンドバッド「おれはいまからすぐこれを、アクスムだかなんだかってとこに採りに行くぜ。ついては、お前も来い!!」
トリ「ええっ!なんて強引な!」
若者シンドバッド「一攫千金!これでおれも、七海商会に負けない会社を創れるぜ。名付けて…『シンドバッド&カンパニー』!お前らはこの"カンパニー"の部分なっ!」
トリ「ひ、ひどい…。勝手に…。」
いざ、出発! |
ソロモン「も、もしかして…。」
トンガリ帽子の魔法使い「わ、わしら…。」
二人「忘れられてるな、カンペキに…。
いや、このトカゲ君だけはわしらに興味を示してくれているようじゃ。若者たちはさっぱりじゃが…。」
ソロモン「それにしてもあのメネリクとかいう若者。何やらなつかしい匂いがすると思ったら、あれは乳香か?フランキンセンスか?ああ、シバ、わが妻、なつかしや。」
トンガリ帽子の魔法使い「ソロモンどのよ、何やらあの若者はおぬしに面影が似ておるな。」
ソロモン「…。いやおっさん、それはムリヤリだろ。」
シンドバッド老人「さてさてお二人さんよ。ここはひとつ、若者に任せて、わしらはゆっくりこのコーシーでも飲まんか、コーシーでも。
マナやらハオマやらにはまけるかもしれんが、これはずいぶん元気になるぞ。わしらも少し若返ろう。」
ソロモン「じじいよ、コーヒーだ、コーヒー。」
メネリク「これはこれはお客人、失礼した。コーヒーのほかにはこのようなものもありますぞ。これは時空を超えて遠く南海から取り寄せた…。」
ソロモン&トンガリ帽子の魔法使い「あー、よいよい、わしらはそれは飲まんのよ。すまんな、ありがとよ。」
メネリク「あれ?あなたもしや、ソロモン王?いや、いいです。なんでもないです(ムニャムニャ)」
ソロモン「???
しかしあの黒い水、コーヒーか。うまいな。正直、味も含めて評価すればマナよりも上かもしれん。
マナは…じつはマズい。
元気になるし賢くなるが、マズい。」
トンガリ帽子の魔法使い「うむ、うまかったな、珈琲。ハオマよりもうまい。
ハオマもな、じつは…マズい。
頑健になるし天啓も得られるが、マズい。」
メネリク「コーヒーのご用命は、『シバ&カンパニー』まで!」
若者シンドバッド「違ーーーう!Founder, CEOは、おれだーーー!」
ソロモン「なに!?シバ?シバがどうした?
おまえ、シバ(ja/en)のなんだ!?
おまえまさかわしの・・・!?」
(おしまい)